水の巫女さまと止められない不埒

  • 水のご加護を賜る教会にて #2
  • メリル様の、今にもこぼしてしまいそうなお姿。その想像を味わうために、私はお水を飲んで過ごします。

私の家も、薬草を育てる農家です。この村にとって、薬草を買い続けてもらうことはとても大切です。なので年に二度、種蒔きの時期と刈り取りの時期に、品質管理のため農家が集まって話し合いをします。いつもはお父さんだけが行くのですが、指を怪我してしまっていて、書きものができません。そこで、お母さんがついていくことになりました。この話し合いは親睦や情報交換も兼ねているそうで、半日ほどかかります。

「何かちょっとでも気になることがあったら、ハーディさん家に頼ってね。」
「もう……私を何歳だと思ってるの? ちょっと長いだけでしょ? 夜に一人なわけでもないんだから。わかってます。」
「お料理の火はくれぐれも気をつけなさい。」
「ときどき作っているでしょう? 信用してよ。」
「はいはい、わかりました。じゃあ、お留守番よろしくね。」
ハーディさんはお隣さんで、いい人です。でも、今日だけは決して頼りません。長い時間、家に一人きりとわかっているなんて! ずっと思い描いていたあれを実行に移すチャンスなんて、次はいつになるかわかりませんから。

私はいけない子です。小さかったころ、シルヴィアとお手洗いの順番を奪い合ったことがあります。私はじゃんけんに勝って、なんとか間に合わせることができました。けれど、お手洗いを出てみると、そこには今まさにおしっこをあふれさせているシルヴィアがいました。そして、メリル様のお言葉。大人も、もれそうになったり、もらしてしまうことがある。前を押さえてしまうこともある。その日は、シルヴィアがかわいそうだった、私も気をつけよう、と思っただけでした。しかしふと……、たとえば、何かの理由で仕方なくお手洗いを我慢してしまったとき、あのときの間に合わせた解放感が、シルヴィアの様子が、メリル様のお言葉が、蘇ってくるのです。いつしか、それは胸の高鳴りを伴うようになりました。私は、お手洗いを我慢する様子や失敗する様子が好きになってしまったのです。

それからしばらくは、そうした様子を想像するだけで満足していました。しかしあるとき、あの日の私やシルヴィアの感覚が、そして、もれそうになったりもらしたりしてしまう大人の感覚が、恋しくなりました。そうして、あえてお手洗いに行かずに過ごす遊びを覚えました。もちろん、いつもそうしているわけではありません。ときどき……本当にときどき、いつもならお手洗いに行くはずのところを、我慢します。少しずつ高まっていく感覚に、あの日を重ねます。とはいえ、外ではもちろん、家でも両親の目がありますから、あのときのように押さえてしまうほどの我慢はできません。……こっそり夜中にしてみようと、ベッドの中で身悶えしたこともありました。けれど、軋むベッドの音で両親が起きてしまわないか、止めどきを見失ってベッドや床を汚してしまわないかが心配で、心行くまでは楽しめませんでした。お手洗いに駆け込んだときの解放感も、あの日ほどではありませんでした。ところが今日は、半日も、家に一人です。万が一床を濡らしてしまったとしても、掃除をする時間さえ十分にあります。我慢します。あの日のように、限界まで。

お母さんがお父さんについていくと決めた一昨日から、どんな風に我慢をしようか、考えていました。そして、あまりにも素晴らしい、心が溶けてしまいそうな方法を思いつきました。私の尊敬するメリル様は、礼拝で水の儀式をなさいます。何度もお水を飲まれながら、二度の儀式と相談会をそのままお過ごしになります。お手洗いに行きたそうな様子もありません。もちろんそれは、儀式で使われる祈りの水がすぐに加護に変わるからで、メリル様は何も飲んでいないのと同じだからです。でも……こんな私ですから、もしそうではなかったら、実は隠しているだけだったら、といつも心をときめかせて、メリル様を見てしまいます。密やかな欲求に耐えながら祝詞を唱えていらっしゃったら。相談会では、膨れ上がったお腹を隠したまま、にこやかにお話を聞いていらっしゃったら。人の目がなくなり、思い切り前を押さえて、お手洗いに駆け込んでいらっしゃったら。想像の中でメリル様が苛まれている感覚は、私がじゃんけんに勝ったあのときと、ベッドの中で悶えたときとに支えられています。ひとつは、小さなときすぎて、我慢できる量も少なかったし記憶も曖昧です。ひとつは、我慢だけに集中できたとは言えません。想像のメリル様と、同じだけ我慢する。それが、今日することです。我慢には自信があります。我慢する遊びを始めてから、少しずつお手洗いが遠くなり、一度にする量が増えてきました。今となっては、学校で一度もお手洗いを使わなくても問題なく過ごせます。同い年はもちろん、大人よりも我慢できると思います。思ったよりも余裕だったら、これからの心の拠り所をどうしよう……そんな不安すら持っていました。

本当は朝九時に礼拝が始まりますが、両親が家を出るのは十時前なので、一時間ずつ遅らせることにしました。十時から十一時が前の儀式、三十分間はお休み、十一時半から十二時半が後の儀式です。儀式の間はだいたい均等に、コップのお水を六回飲みます。本当は盃ですが、注ぐところを見せていただいたことがあって、コップ一杯とだいたい同じ量だとわかっています。儀式の次は相談会です。長くて一時間半くらいですから、二時までにします。両親が帰る時間を考えると、三時までなら延長できそうですけれど……。その間、ずっと、お手洗いなし。お水をこんなに飲んで我慢したことはないので、少しドキドキします。

がちゃ、ばたん。しゅる。とん。しゅいいい。じゃばじゃば、がちゃ、ばたん。もしも本当に祈りの水がなくならないのなら、礼拝の前にはお手洗いを済ませるだろうと思ったので、今行っておきます。本当は十五分前くらいに礼拝堂を開けてくださるので少し遅いのですが、それは相談会を十分延ばせばいいでしょう。いよいよ、礼拝が始まります。

まず祈り、そして最初のお水。招詞……は何を言えばいいのかわからないので、とりあえずそれらしい時間待ちます。二度目のお水。交読……はとりあえず先週の真似をします。三度目のお水。お祈り。メリル様はここで色々と仰います。なんとなく覚えていますが、なんとなくなので待っておきます。ううん……これだと、身体に残っても残らなくても、相談会の終わりくらいまでなら何も変わらないのかもしれません。身体に残るのだとしたら、メリル様も私くらいお手洗いが遠くなるかもしれませんし。そうだと残念……これからはどんなときのご様子を想像すればいいのか、考えなおさないといけません。四度目のお水。信仰の言葉。もちろん、ばっちり言えます。教会に響くみんなの声が聞こえるようです。五度目のお水。もう一度お祈りなので、時間を潰します。これだけ飲むと、お腹がちゃぽちゃぽしますね。本当に平気なままなのかな……と思ったのですが、そうやって考えてみると、ちょっとだけ、溜まってきているような気がします。これだけ飲んだら、そうですよね。ジュースを貰った小さな子みたいに、お水ばかり飲んでいますから。でも、もう四十五分は経ってしまいました。この調子で終わってしまうのか、たくさん飲んだ意味が少しずつ出てくるのか。最後のお水を飲んで、みんなで祈って……意味があるといいなと願って、前の儀式はおしまいです。最後に歌います。歌うのって楽しいですよね。そして、お説教があります。メリル様のお言葉はいつも優しくて、それでいて気づきがあって、大好きです。少し、気になってきました。お水の効果が出てきたのでしょうか。礼拝が始まって一時間です。

ここから三十分は、人の入れ替え時間です。メリル様は、大きな盃から小さな盃にお水を注いだり、誰かに話しかけられたり、にこやかにみんなを見ていたりします。私もとりあえず、にっこりとして椅子に座っています。暇です。ちょっと、したい。むしろ何かしていればそんなに気にならないと思うのですが、暇だとわかります。学校から帰る直前とかって、こんな感じです。まだ十分。やっぱり、ちょっと、したい。でも、今の私はメリル様。メリル様は、この間ずっと礼拝堂にいらっしゃいます。ということは、お手洗いには行けません。これくらいなら、まだまだ平気です。二十分。今思えば、メリル様はこのとき立っていますね。私も立ってみましょう。え、あ。おしっこ。これ、結構……、思ったより、したいですね。座ったら……うん、楽になります。そういえば、我慢中に長々と立つことなんてこれまで試していませんでした。メリル様と同じように、あと十分立ちましょう。あ、違う。後の儀式でも、メリル様は立っていらっしゃいますね。これであと一時間ちょっと……。想像のメリル様が、そもそもこれくらいではしたくならない、という結末にはならずに済みそうです。ドキドキします。ふー……。十分って、何もしないと長いですね。ずっと、おしっこと向き合っていました。とくに気合がいるほどではありませんが、「溜まってるよ」と十分間言われ続けた感じです。もちろん、メリル様のように姿勢よく立っていました。ちょっとお腹を触ってみたのですが、おへその近くまで硬く張っていました。これが、全部おしっこ……。そろそろ、後の儀式です。始めましょう。

祈り、最初のお水。あー……こうなると、飲むのって少し抵抗がありますね。でも、もちろん飲みます。メリル様も飲んでいるんですから。招詞の分、待ちます。何か、急に寒くなったような、なんとも言えない感じがします。ずっと立っていて、気づいたら足を動かしてしまっていました。メリル様はいつも姿勢よく立っているので、じっと立ちます。あ……これ、動きたい……、おしっこ……。二度目のお水。あんまり飲みたくないですね……。飲んだら、これもおしっこに……。いえ、メリル様はいつも、こんな感覚になりながら、凛々しく儀式をなさっているのかもしれません。ごく、ごく。次は交読です。なんとなく、お水を注いでいるような、そんなイメージが浮かびます。それくらい、一気に、注がれているというか、出口をしっかり締めておかないと、そういう感じです。まだ半分来ていないのに。ええと、たぶんそろそろ三度目のお水です。お水。もう、出口、気になっているんですけれど……。お祈り。たぶん十分くらい待てばいい。足を動かしたい。足踏みしたい。じっと立ちます。私は水の巫女なんだから。四度目のお水。コップが六つもないので毎回注ぎます。その手がちょっと震えます。これ、飲むの? 飲みすぎてお腹もいっぱいですし、もう一方はもっと深刻です。ごくごく。トイレに行きたい。おしっこ、おしっこしたい。お祈りの間は考えないようにしようとしましたけれど、無理です。したい。したいしたいしたい。信仰の言葉なら、私も言える……。毎週口に出している言葉だから、言えます。でも、いつもは、少しメリル様のことを考えてはいても、大切な神様への言葉として、気持ちもこめているつもりです。今日はだめ。口には出せても、頭の中はもうおしっこでいっぱい。おしっこしたい。足が動いちゃっていました。いけません。じっとします。がまん。がまん。動きたい。立っているのが辛い。五度目のお水。注ぐとき、コップの外に少しこぼしてしまいました。飲みたくない。もう飲まなくてもいいと思う。もうこんなにおしっこしたいんだから。ごく、ごく、ごくん。ゆっくり飲むよりも一気飲みする方が楽な気がする。お祈り。平気だけれど、押さえたい。押さえて楽になりたい。おしっこしたい。メリル様が、こんなに我慢しながらお祈りをしていたらどうしよう。素敵で、嬉しくて、心配。だって、お祈りの言葉が出てこないと思います。私はもう、頭がいっぱいです。トイレ。押さえたい。座りたい。おしっこしたい。ええと、最後のお水の時間。本当に飲まなきゃだめですか……? 慎重にコップに注いで、注ぐときに足踏みをして、震える手でコップを持って、ごくごくごくんっ。一気に飲みます。儀式が終わった。椅子に座ります。あっ、いい……座るだけで、思ったより楽になります。もじもじはしたいけれど、押さえたいけれど、さっきよりはましです。あ、違う……まだ、歌とお説教が、立ったままでした。立たなくちゃ。立つと苦しい。もう、おへそのちょっと上を触っても、かちかちになっています。すごい。さっきと比べて、おしっこがこんなに増えた。だから、したい。こんなにいっぱい、私の中に、おしっこ。がまん、がまん、がまん……!

歌……しっかり声を出したら、別のものも出てしまいそうなので、メリル様が最初にする手の合図だけをして、心の中で歌います。でも、その歌がすぐにおしっこで中断されてしまいます。気を取りなおして、続き。おしっこ。続き。おしっこ。続き。歌が終わって、最後のお説教です。お説教は、絶対に声を出さないと……。とりあえず、ご本を頭から読んでみます。私の声、お皿を割ってしまって謝ったときみたいです。メリル様は、もっと温かく、優しい声で話してくださっているのに。私もそうしないといけないのに。でも、でも、だって、トイレ、トイレ、トイレに行きたくて、おしっこ、早く、おしっこ、したい。ぎゅううう。無意識に、押さえてしまいました。すごい。もう小さな子じゃないのに。あるんだ。こんなこと。しっかり立つって思っていたのに、手がひとりでに動いていました。あのときのやり取りを思い出します。
「えっ! じゃあ、大人が、前を押さえちゃうこともあるの?」
「ありますよ。」
うん、あります。確かに私はまだ大人ではないかもしれないけれど、もう小さな子ではないから。大人もきっと一緒です。押さえちゃだめって思っていても、おしっこがしたすぎて。でも、だめです。今は、私はメリル様なんです。メリル様は、もしもものすごくおしっこがしたかったとしても、お説教の間に前を押さえたりしません。したい。したい。押さえたい。せめて足踏み。せめてもじもじ。それらを全部言いくるめながら、私はなんとか、立ったまま、十二時半を迎えることができました。後の礼拝が終わったのです。

その瞬間、私は椅子に座り、腰を折り、手を前に当て、身体を捩りました。おしっこしたい。今まで押さえなかったのは奇跡。もう、頭の中すべてがおしっこで、ちゃぷちゃぷと音がします。お腹も、普段の私とは違う気がします。きっと膨らんでいる。ちょっと触ると、おへその上までのどこを押しても、薬草をぎっちり詰めた麻袋のように、かちかちでした。これが全部、おしっこ。私が、いま、我慢している。したい。したい。おしっこしたい。あぁ、あの日、私もシルヴィアも、これくらいしたかったかな。二人とも、思い切り押さえながら走って、お手洗いに辿り着いて。じゃんけんに勝って、だめ、だめ、私はまだ出せないんだから。ちがう、がまん。がまん。そう思うと、あの歳でこんなに我慢して、なのにじゃんけんで負けてお預けにされてしまったシルヴィアがおもらしをしてしまったのは、当然のように思えてきます。今、トイレに辿り着いて、なのに目の前で待たされたら。私も、あの日のシルヴィアちゃんになってしまいそうです。いえ、そうじゃなくても、ただ、もう、こうしているだけで、でちゃう、でちゃう。もれちゃう。

ええと、相談会です。相談会……。いまから。一時間半。無理です。そんなの。今、今すぐ。今すぐトイレに行かなくちゃ。もう待てないのに。相談会は、メリル様も座っています。立たなくていい。でも、メリル様は押さえていません。押さえちゃだめ。そんなの、そんなの、できない。私は水の巫女です。想像のメリル様は、この感覚を必死で抑えつけて、隠して、私にお話ししてくださっているのですから。私も、しなくては。がまん、がまん。一人目がドアをノックします。手を離します。背筋を伸ばします。あ、だめ、これ。でる。でる。えーと、誰でもいいんですけれど。
「どうぞ、お入りになってください、あら、シルヴィアさん、今日はどうなさいましたか。」
ものすごい早口で、一気に言います。声が震えます。メリル様とは似ても似つかない。だって、だって。おしっこ。したい。したい。おしっこしか考えられない。相談なんて乗れるわけない。トイレに行かなきゃ。ドアを開けて、座って、ぶしゅー。ちがう、ここは、告解室、トイレじゃない、したい、にっこりしなきゃ、メリル様はいつも柔らかい笑みを浮かべていらっしゃって、おしっこがもれそうで、手で押さえちゃいけなくて、ああああ、こぽこぽって、注がれた気がする、もう入らないのに、一気にお腹に、おしっこが、押さえちゃう、離さなくちゃ、離す、押さえちゃう、離す、押さえちゃだめなのに、相談中なのに、メリル様はそんなことしないのに、まだ五分しか経ってない、そんな、こんなに我慢したのに、おしっこ、おしっこ、もれちゃう、たすけて、あぁぁ、でる、でる、だめ、トイレ、トイレ、トイレ、トイレ、トイレ、歩いていけなくなっちゃう、どうしよう、トイレ、トイレ、もう終わりに、でも、メリル様は自分の都合で終わらせたりしない、もう押さえちゃってる、どうしよう、おしっこ、おしっこ、おしっこ!!

決めた。今日は相談がたまたま少なくて、二人だったことにしましょう。もう五分は経ったから、一人十分で、十二時五十分にトイレに行く。でちゃう。あと十五分くらいの我慢。メリル様なんだから、手は離します。メリル様は、私が最後の番でも、いつも通りお話ししてくださるから、こんなにもれそうなのに、もう、さっきから、それは無理だとわかっています、こんなにもれそうで隠すなんて無理で、私のいけない想像は想像に過ぎなくて、祈りの水は加護になって消えているんですけれど、でも、メリル様がこんなに我慢して、隠しているんだとしたら、だから、手を離します。離した。がまん、がまんがまんがまん。さあ、シルヴィアさん、相談をどうぞ、ともう口には出せずに言ったことにして、相談の内容なんて思いつかない、押さえちゃだめなのに、手がまた帰ってきて、思い切り押さえて、ちょっとだけ、ちょっとだけ幸せ、おしっこでる、でる、きてる、メリル様、そう、これはメリル様のおしっこなんだから、離して我慢できるはず、離す、身体が揺れちゃう、もういい、押さえてさえいなければ、あふれちゃう、出口こわれちゃう、おさえたい、おしっこ、おしっこ、足動いちゃう、もれちゃう、あ、そろそろシルヴィアはおしまい、いつでもいらしてくださいね、シルヴィアは部屋を出たから、誰も見てない、ぎゅうううう、押さえた、しあわせ、うれしい、いきかえる、もういい、相談中でも押さえちゃう、もれちゃうよりましだから、おしっこ、おしっこ、次誰にしよう、つぎ、おしっこ、どうぞ、お入りになってください、もれちゃう、えーと、えーと、メリル様、今日はどうなさいましたか、メリル様、私おしっこもれそう、おトイレ、トイレ、トイレに行きたいです、メリル様とお話ししながら、もしかして我慢だったらって、でもわかりました、無理です、あんなに飲んで、我慢は、だって、私最後の番に相談、っていうことは、まだ一時間くらい先で、そんなの押さえてても無理で、これがメリル様のおしっこだって、思って頑張ったけど、メリル様、おトイレ行かせてください、メリル様、トイレに行かせて、メリル様、トイレ、私ごめんなさい、こんな子で、もれちゃう、苦しい、でもちょっと嬉しくて、だから頑張りたいけどもう無理で、メリル様、メリル様より一時間短いんですけど、トイレ行きます、ごめんなさい、メリル様、私、無理、先に、おしっこ、おしっこ、ごめんなさい!!

私は、あの日よりもひどい姿で、十歩もないお手洗いへ、必死で近づきました。本当は、もう出てる、手で押さえているから、出ていないだけ。そんな気がします。トイレのドアを開きます。目の前に、ずっと、ずっと、ずっと待ち望んだ、この暴れ狂うおしっこを受け止めてくれる、その場所があります。身体が震えます。お腹が縮んでいくような気がします。おもらし寸前の私。本当はあと一時間我慢するはずだったのに、勝手に相談が少なかったことにした私。減らした時間すらも待てなかった私。メリル様のおしっこだったのに。早く切り上げたことなのか、こんな遊びをしたことなのか、我慢に興味を持ってしまったことなのか、私は私を罰したくなったのでしょうか。もう何も考えられないはずだったのに、出すことしか考えていなかった頭の中に、ふと声が聞こえた気がしました。ミリィちゃん、シルヴィアちゃん、二人ともお手洗いですね。すぐに入りたいでしょうけれど、少しだけ待ってあげられそうな素敵な子はいないかしら? 私が先、もれちゃう、私が先にトイレって言ったの! あたしのほうが、でちゃう、でちゃうぅ! うーん、そうですね……、私の見たところ、シルヴィアちゃんの方が大変そうですね。シルヴィアちゃん、どうぞお入りなさい。ミリィちゃんもしたいと思うけれど、ちょっとだけだから、待ってあげてくださいね。シルヴィアちゃんがトイレに飛び込みます。目の前で口を開けて、私が来るのを待っていてくれたはずなのに。私はその場に、内股で、前を押さえて、身体を震わせ、立ち尽くします。メリル様。そんな、そんな、私ずっと我慢して、私、私、必死で、必死でここまで来たのに、待てるわけないのに、ひどい、メリル様、トイレ、私が先、私が先、もれちゃう、だめ、だめ、だめ、がまん、がまんしなくちゃ、メリルさま、おしっこ、おしっこぉ!!! おまたせ! シルヴィアちゃんが出てきます。間に合った、我慢できた、私の番、私の番。ミリィちゃん、待ってください。駆け込みかけた私の足が止まります。ミリィちゃん、ごめんなさいね、少し聞いてください。加護に変わるという祈りの水ですが、加護の力を果たしたあと、そのままお腹に溜まるんです。ずっと我慢していたんです。ミリィちゃんよりも、もっと、したいんです。ごめんなさい。私、ミリィちゃんの先に入ってもよろしいですか? えっ、えっ、私、もれちゃう、メリル様、ごめんなさい、私先! 先に入れてもらうつもりで、謝るつもりで顔を向けたメリル様は、内股で、前を押さえて、身体を震わせていました。ミリィちゃん、私はもう、待てません。ミリィちゃんが先に入るということは、私はおもらししてしまうということです。どうか、譲ってください。あ、あ、メリル様、どうぞ……。前を押さえたメリル様が、内股のメリル様が、儀式からずっとずっと、大きな噴水を隠し続けたメリル様が、私を差し置いて、私も我慢できないと言ったのに、それでも私を待たせて、トイレに駆け込んでいきます。メリル様があの美しいローブをめくって、清楚な下着を下ろして、ずっとずっと溜め込んだ祈りの水を、みんなに隠し続けた祈りの水を、ものすごい音で、ものすごい勢いで。じゅじゅいい、じゅいいい、私の下着から、水音がします。じゅいいい、たぱたぱ。祈りの水が下着に当たり、床に落ちる音がします。メリル様に譲ってあげた。メリル様に譲ってあげたから。初めてのおもらし。顔が熱く、目の前が、ずっと待ち望んでいたお手洗いが、歪んで見えます。顔を下に向けると、水たまりが少しずつ広がっていきます。私のおもらし。それとも、メリル様に譲っていなかったなら、メリル様がこの水たまりをお作りになったでしょうか。

長い恍惚のあと、私は服を洗い、床を拭きました。元通りになると、急に疲れが出て、ぼんやりとしていました。しばらくして、両親が帰ってきました。何も言われなかったので、隠し通せたのだと思います。そして、この日から、何度も何度も、気持ちが高まるたび、お手洗いに駆け出したときの、お預けされたときの、ついにあふれてしまったときの、感覚を思い出すのでした。